2006年 03月 20日
Capote |
作家カポーティの、野心や虚栄心、孤独、卑小さ、ナルシズム、傷つきやすさ、露悪趣味、目的のためなら平気で嘘をついて他人を思い通りに操ろうとする残忍さなどを、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンが不気味に演じる。ストーリーの焦点は、カポーティと、彼の取材相手のひとりである殺人犯との関係。孤独な殺人犯の生い立ちに自分のそれを重ね合わせたりして、カポーティは彼に強くひきつけられる一方、自分の本を早く完成させたいがために、結果的に、自分に対する彼の気持ちを踏みにじる。ホフマンは、しゃべり方やジェスチャーがカポーティにそっくりだが、もっと驚くべきは演技の幅の広さ。本心を言っているのか、嘘を言っているのか自分でもわからなくなり、結局、ミイラ取りがミイラ取りになったように破滅してゆくカポーティの複雑さを、繊細さやユーモアを入れてパワフルに演じている。
ちなみに、ホフマンは、1999年、"Flawless"で、ロバート・デ・ニーロを相手に、イースト・ビレッジに住む、愛と優しさにあふれる陽気なドラッグ・クイーンを演じている。狡猾なカポーティとは対照的なキャラクター。確か、その役で様々な賞にノミネートされた。
ところで、いったいカポーティは『冷血』のドラマ性を高めるために、実際に起きた殺人事件の背景と詳細のうち、何を入れ何を省いたのかという点と平行して、いったいこの映画自体は、どの程度実話に基づいているのかという疑問が出てくる。しかし、あたりまえだが、媒体が何であれ、作り手は膨大な事実の中から、自分に合った、あるいは表現目的に合った部分を選択せざるをえない(たとえ、どんなに”客観的な”姿勢を取ろうとしても)。もちろん、この映画のクレジットの終わりには、「実在の人物に基づいているが、脚色した部分がある」という注意書きが出てくる。
しかし、結局、優れた作品は、事実か虚構かといった問題を超越して普遍性を持つ。気持ち悪いが、この作品は文句なしにそれに入る。
ちなみに、ホフマンは、1999年、"Flawless"で、ロバート・デ・ニーロを相手に、イースト・ビレッジに住む、愛と優しさにあふれる陽気なドラッグ・クイーンを演じている。狡猾なカポーティとは対照的なキャラクター。確か、その役で様々な賞にノミネートされた。
ところで、いったいカポーティは『冷血』のドラマ性を高めるために、実際に起きた殺人事件の背景と詳細のうち、何を入れ何を省いたのかという点と平行して、いったいこの映画自体は、どの程度実話に基づいているのかという疑問が出てくる。しかし、あたりまえだが、媒体が何であれ、作り手は膨大な事実の中から、自分に合った、あるいは表現目的に合った部分を選択せざるをえない(たとえ、どんなに”客観的な”姿勢を取ろうとしても)。もちろん、この映画のクレジットの終わりには、「実在の人物に基づいているが、脚色した部分がある」という注意書きが出てくる。
しかし、結局、優れた作品は、事実か虚構かといった問題を超越して普遍性を持つ。気持ち悪いが、この作品は文句なしにそれに入る。
by nyfilmetc
| 2006-03-20 14:27
| 映画