2006年 07月 28日
Road to Guantanamo(監督:Michael Winterbottom, Mat Whitecross) |
In This Worldで、よりよい暮らしを求めて、はるばるパキスタンからロンドンまで密入国するアフガニスタン人を描いたマイケル・ウィンターボトム監督がマット・ホワイトクロスと共同監督したこの作品は、実在のパキスタン系イギリス人が経験したことを再現したドキュドラマである。
2001年10月、イギリス中部。母親の紹介でパキスタンに住む女性と結婚が決まったイスラム教徒青年は、友人3人と連れだってパキスタンに向かう。アフガニスタン爆撃が始まり、ただの好奇心と、何かボランティアをしたいという、軽い気持ちから4人はカラチからアフガニスタンに入る。しかし、混沌としたアフガニスタンを見たあとまもなく、パキスタンに戻ろうとする。ところが、タリバン狩りをしていた北部同盟に捉えられ、過酷な状態でキューバのアメリカ軍基地グアンタナモに送られ、アルカイダ兵士とレッテルを貼られたまま、非情な拷問を受ける……。ひとりは途中で行方不明になり、3人は拷問に抵抗し続け、捉えられてから2年後にイギリスに帰国する。
冒頭と、途中に、ブッシュ大統領、ラムズフェルド国防長官のコメントとニュースが少し入って、ストーリーは進む。日差しをさける屋根や壁のない、まるで鳥かごのような監獄だとか、手足をしばって不自然な姿勢のまま放置するとか、顔や身体を殴るとか、既に報道されてきた拷問とはいえ、それが映像になると、やはりものすごく気持ち悪い。長い歴史の教訓を、人間は少しも学んでいないと暗くなる。ブッシュ曰く、「彼らは”Killers(殺人者)“だ。私たちとは違った価値観を持っている」(有罪判決が出るまでは無罪という司法の原則はいったいどこへ? 多様な価値観を認めるというのがご自慢の”アメリカの民主主義“ではなかった?)、ラムズフェルドの「囚人はジュネーブ条約に沿った扱いをしている」(どこが!)ひどい偽善主義!
さしたる根拠もないのに、イスラム教徒の格好をして、アフガニスタンにいたというだけで、オサマ・ビン・ラディンの手下扱いされた青年たちだが、これは氷山の一角だと思えてくる。アフガニスタン攻撃のときに、十把一絡げで捕まったイスラム教徒たちが、イスラム諸国の歴史や文化、社会についての知識はほとんど持たないアメリカ人やイギリス人に尋問を受けて、確たる証拠もないまま、監獄に入れられて拷問を受けているのだと想像できる。
また、この映画を見て再認識したのは、政府が主張する“情報活動”がどこまで信憑性があるのか、どこまで効果的かとういうこと、それから、まったく別の次元だが、他人の苦痛を見て快感を味わうサディストたちにとって、戦争はまたとない機会だということ。恐ろしいことに、人間が戦いを止めないのは、生理的な攻撃性と関係が深い。ああ、暗くなる。
いっしょにこの作品を見たジューイッシュの友人は、目を真っ赤にしてため息をついた。「自分がもし、戦前に生まれて、ナチに捕まっていたら、グアンタナモに送られて拷問を受けたイスラム青年たちよりもひどい目に遭っていただろう。きっと家族全員殺されていただろう。人ごととは思えない」。
映画的には、In This World と同じように、デジタル・ビデオ撮影のおかげで、対象との距離が近く、演出感が薄い(実は、うまく演出されているのだが)。ニュース映像のようなイメージである。
2001年10月、イギリス中部。母親の紹介でパキスタンに住む女性と結婚が決まったイスラム教徒青年は、友人3人と連れだってパキスタンに向かう。アフガニスタン爆撃が始まり、ただの好奇心と、何かボランティアをしたいという、軽い気持ちから4人はカラチからアフガニスタンに入る。しかし、混沌としたアフガニスタンを見たあとまもなく、パキスタンに戻ろうとする。ところが、タリバン狩りをしていた北部同盟に捉えられ、過酷な状態でキューバのアメリカ軍基地グアンタナモに送られ、アルカイダ兵士とレッテルを貼られたまま、非情な拷問を受ける……。ひとりは途中で行方不明になり、3人は拷問に抵抗し続け、捉えられてから2年後にイギリスに帰国する。
冒頭と、途中に、ブッシュ大統領、ラムズフェルド国防長官のコメントとニュースが少し入って、ストーリーは進む。日差しをさける屋根や壁のない、まるで鳥かごのような監獄だとか、手足をしばって不自然な姿勢のまま放置するとか、顔や身体を殴るとか、既に報道されてきた拷問とはいえ、それが映像になると、やはりものすごく気持ち悪い。長い歴史の教訓を、人間は少しも学んでいないと暗くなる。ブッシュ曰く、「彼らは”Killers(殺人者)“だ。私たちとは違った価値観を持っている」(有罪判決が出るまでは無罪という司法の原則はいったいどこへ? 多様な価値観を認めるというのがご自慢の”アメリカの民主主義“ではなかった?)、ラムズフェルドの「囚人はジュネーブ条約に沿った扱いをしている」(どこが!)ひどい偽善主義!
さしたる根拠もないのに、イスラム教徒の格好をして、アフガニスタンにいたというだけで、オサマ・ビン・ラディンの手下扱いされた青年たちだが、これは氷山の一角だと思えてくる。アフガニスタン攻撃のときに、十把一絡げで捕まったイスラム教徒たちが、イスラム諸国の歴史や文化、社会についての知識はほとんど持たないアメリカ人やイギリス人に尋問を受けて、確たる証拠もないまま、監獄に入れられて拷問を受けているのだと想像できる。
また、この映画を見て再認識したのは、政府が主張する“情報活動”がどこまで信憑性があるのか、どこまで効果的かとういうこと、それから、まったく別の次元だが、他人の苦痛を見て快感を味わうサディストたちにとって、戦争はまたとない機会だということ。恐ろしいことに、人間が戦いを止めないのは、生理的な攻撃性と関係が深い。ああ、暗くなる。
いっしょにこの作品を見たジューイッシュの友人は、目を真っ赤にしてため息をついた。「自分がもし、戦前に生まれて、ナチに捕まっていたら、グアンタナモに送られて拷問を受けたイスラム青年たちよりもひどい目に遭っていただろう。きっと家族全員殺されていただろう。人ごととは思えない」。
映画的には、In This World と同じように、デジタル・ビデオ撮影のおかげで、対象との距離が近く、演出感が薄い(実は、うまく演出されているのだが)。ニュース映像のようなイメージである。
by nyfilmetc
| 2006-07-28 23:04
| 映画